Columnコラム
絶滅が心配される天然記念物の雷鳥
山登りを初めて10年。咲き誇る高山植物に癒されながら,やっと辿り着いた頂上からの富士山や槍ヶ岳・幾重に連なるアルプスの山々の絶景。なかなか眠れない夜,山小屋の外でブルブル震えながら見上げた満点の星や流れ星。笠ヶ岳でのブロッケン現象。滝雲やハロも。こんなご褒美がもらえるなんて。本当に山は素敵です。
そしてもう一つ,アルプスに出かける時は微かな期待が加わります。今回は雷鳥さんに会えるかな?と。
最初の雷鳥との出会いは,登山を初めて間もない唐松岳からの下山時。「いるよー」と先輩のささやく声。振り向くと這松の蔭へ。一瞬でしたが,雷鳥に出会えた事がその後,益々私を山へ駆り立てました。
白馬岳から白馬大池に下る早朝,ガンコウランを盛んについばみ食事していた5羽の親子が突如10m程先の岩へ。雷鳥が飛ぶとは思わなかったのでビックリ感動ものでした。
雷鳥との最高の思い出は水晶岳。雷鳥は天気が悪い日の方が出会う確率が高いのですが,その日はよく晴れた登山日和で,登山道は数珠つながり。先方でなにやら様子がおかしい。「雷鳥がいる」とのひそひそ伝言に皆そわそわ。やっと順番が来て,チョコチョコ歩き回る雷鳥とご対面。写真に収め後ろのグループに順番を渡そうと登り始めたら,なんと我々のグループと一緒に登り始めたのです。わずか数mでしたが今でも忘れられません。雷鳥さん親子と並んで頂上目指したのです。
先日,NHKのTV番組「ダーウィンが来た!」で,半世紀も姿を消していた幻の生育地,中央アルプスに再び雷鳥を復活させるという一大プロジェクトの様子が放映されました。
その取組みに係る二つの動物園が,私の故郷長野市の茶臼山動物園と,ここ那須どうぶつ王国。なんと不思議な縁でしょう。何年か前から那須どうぶつ王国での飼育・繁殖に取組む記事を目にしては応援していましたが,今回は高山から親鳥を動物園に移送して,繁殖して育て,その家族を中央アルプスに野生復帰させるという壮大な取り組み。そして8月には無事野生復帰に成功し,一か月後には元気に羽ばたいて居ることが確認されたとの事。あとは雷鳥の生命力を信じて見守るしかないそうです。
来夏は中央アルプス木曽駒ヶ岳のお花畑で、元気に遊びまわる沢山の雷鳥の家族に会いに行きたいと,夢は膨らみます。
溝口