Columnコラム

2022.08.03

チャート

主に栃木県内の様々な場所でボーリング調査を行ってきたのですが、特に硬質な岩盤をコア採取するケースにおいて代表的な基盤としてチャートがあげられます。
経験的には鹿沼市・栃木市・足利市方面でお目にかかってしまいます。
モース硬度6-7(鉄よりも硬い)を示すため、通常の合金のメタルクラウンでは歯が立ちません。
人口のダイヤモンド粉末を合金に混ぜて焼結したダイヤモンドビットで掘削するのですが、日進1m~2mしか掘削できない時もあるので、あまり良いイメージはありません。学術調査と異なるため、一定程度の掘削スピードが求められるからです。

あきれるほど硬いという事と、二酸化ケイ素(Sio2、石英)が主成分である事、この成分を持つ放散虫・海綿動物などの動物の殻や骨片が海底に堆積してできた岩石である事は知っていたのですが、なぜこんなにも硬くなったのかは考えたことがなかったので、少し調べてみました。

チャートはプランクトンの死骸が集まり固まってできたものです。一見軽そうに思えるプランクトンの死骸には海中では浮力が働いているため大きな圧力を受けないのではと思えますが、プランクトンが海底に沈んでいく時点で海水の浮力に質量が勝っているはずです。
水の密度1g/㎤に対して、プランクトンの遺骸の原料でもありチャートを構成する鉱物でもある石英の密度は2.6g/㎤ほどあります。
プランクトンの遺骸を原料とする石は重いので、大量に上に積み重なるほど圧力が大きくなっていきます。
チャートのもととなる堆積物は、生物の遺骸(石英)プラス水の密度です。上からの圧力によって圧縮される事で上に水が抜けて、より密度が大きくなっていきます。
岩石になる時には圧力だけでなく温度の効果も加わります。冷たい海底では4℃くらいしかありませんが、岩石の堆積物は断熱効果を持っています。つまり海水が冷たくてもなかなか冷めないという事です。
さらに地球内部の熱の供給があるので、チャートには圧力が上がるだけでなく温度も上がっていくという仕組みがあります。つまり深くなればなるほど圧力と熱によって海水が抜けて隙間がなくなって硬くなるという事です。

海の中のプランクトンの死骸は軽そうに考えていましたが、長い時間をかけてあんなにも硬い岩石になったらしいです。
身近にある疑問を調べてみて、それなりの理由があるものだと思った次第です。
(参考資料:Earth Essay 地球のささやき)

柿崎